2020/02/19
No. 709
昨年秋に信濃川や阿武隈川などで広域水害が発生した。1月13日の報道によれば、これら水害の災害廃棄物処理にかかる費用は、国の補助金だけで620億円を超える見込みだという。この10年では、復興特別会計で対応した東日本大震災を除き、熊本地震などが起きた2016年度についで2番目に多いようで、事態の重たさを物語っている。
年が明けると新たな重たさが続いた。まず、記録的な暖冬もある意味で災害と言える。1月10日時点のニュースでは、ある地方の大手建設会社が、例年毎日のように受託する除雪作業が今冬はわずか3日間だと述べている。同じような事情は各地にあるが、これでは経営への影響も甚大であろう。同じころ、オーストラリアでは森林火災が深刻だった。同国の気象当局が、火災の危険性増大のひとつの要因は気候変動だと指摘しているように、国の内外で、この問題への強力な対応の必要は明らかである。
そして新型コロナウィルスの流行は、世界の景気後退リスクを高めることになった。これもまた災害に含めたい。中国はその対応にずっと追われているが、果たして世界は連携して感染拡大を防げることができるだろうか。すでに一国だけの災難ではないだけに、当面は各国が情報を共有し、さらにグローバルな対処システムの構築ができるかが鍵である(その点では情報セキュリティにおける問題も似ている)。
その点について首都大学東京の詫摩佳代准教授は、<災難へのリスクマネジメントは、国家にとっても、民間企業にとっても、いや世界にとってもきわめて重要である。科学技術と国際協力の発展により、人類が国境を超えて感染症と向き合う枠組みを発展させてきたことは大きな功績であった。次なるパンデミックが起きた時、どのようなストーリーが生まれるのかは、既存の枠組みの弱点をどれだけ補強し、どれだけ発展させられるかにかかっている。>と述べている。そう、災害は社会のレジリエンスに対して問題を投げかけている。