2021/03/10
No. 761
企業の経営活動におけるリスクには、<事業機会に関連するリスク>と<事業活動の遂行に関連するリスク>とがあるとされる(引用:2016年版中小企業白書/中小企業庁*)。前者に含まれるのは、[新事業分野への進出]・[設備投資]・[商品開発戦略]・[資金調達戦略]といったもので、企業が踏み出す一歩が成功するかどうかのリスクを指している。すなわち、何もしなければ何も起こらない。新しいことをするなら、適切な相談相手を求める必要がある。頼りになるのは人の存在である。
後者に含まれる項目には、経営者自身が普通にしていても起こりかねないリスクが挙げられる。それは、普通だと思い込んでいると確率が増すリスクと言うべきかもしれない。まず、[災害]は、突然のように襲い掛かることに加え、自らが災害を引き起こす可能性も含まれる。[情報システム]のトラブルも災害に等しいところがある。[商品の品質]・[コンプライアンス]・[財務報告]といった事項には、スタッフの適切な育成や情報共有を怠ることで、経営を内側から危機に追い込むリスクがある。こうした事業活動の足腰の部分がしっかりしていてこそ、事業機会のリスクに立ち向かうことができる。
以上のようなリスクは、日常の至るところに口を開けている。事態をじっくり見つめていては自らの企業を守ることができないし、さらに自らを取り巻く環境に損害をもたらしかねない。ここで重要なことは、リスク回避の知恵や失地回復の経験を丹念に伝えることである。10年前の東日本大震災では、発災時の行動のビッグデータ分析が、今後のまちづくりに活かされそうである。それでも口承で伝えてゆくことの重要さが消えるわけではない。リスクマネジメントは自らを助けるためにあるのはもちろんだが、人とともに地域とともに、賢明さを目指すアクションが重要であろう。