2014/07/16
No. 433
技術を売る企業が得意分野に経営資源を集中することは、いわば正攻法の戦略である。日本電産の永守社長は、起業前からモーターにこだわり続け、この企業が生産する精密小型モーターは驚くほど広範囲の商品のなかに内蔵されることになった。自分はこれで勝てるという確信は企業の中で一貫している。同じくグローバルに成功を収めた企業では、旭硝子の石村社長はガラス自体の性能はまだまだ拡張可能であると語っており(TV東京[カンブリア宮殿]7/10)、基盤技術追究こそが企業の生命線だと感じている。しかしながら彼らの執念はそれだけで終わらない。ひとつの技術の革新はやがて社会システムを大きく変える可能性があるのだ。
最近、サントリーホールディングスとミツカングループがトップ人事を発表し、創業家以外から社長が就任することになった。前者はアルコール醸造、後者は酢の発酵で高い技術の出発点を持つが、どちらも総合食品業を目指して積極的に歩んできた。彼らは新しい市場を積極的に生みだしてきており、活動領域も世界に広がっている。消費者と直接向きあう商品を主力とする点では日本電産や旭硝子らと進め方が異なるが、消費者は先進技術がもたらす切れ味についてどんどん感度が高まっている。新たなトップの選任は企業の総合力が問われる局面ではないだろうか。
彼らグローバルな企業には、当然ながら、日本だけでなく世界をよりよく変える使命がある。現実的に、日本政府以上にその影響力と浸透力がおおきな外交的な役割を果たすことになると感じる。それぞれの商品製造プロセスのみならず、企業の意思決定プロセス、設備投資においてもサステナブルでフェアネスであることも、グローバル化の時代の責任であるだろう。