2011/07/20
No. 287
少し回路をつなぎ替えてみると、新しい価値が生まれるのではないか。そういう実感はいろいろな仕掛けを試みているうちに生まれてくる。もちろん簡単ではない。まずは回路をつなぐことを夢想して、実際につなぎあわせてみて、それが評価に値する成果を生むには長い歳月がかかる。そもそも建築という仕事自体がそういう性格を持つものである。だからこそ納得のゆく成果が生まれるというべきかもしれない。
いま、時代の行方が見えにくいゆえに、異質同士は積極的に接合すべきだと思う。たとえば建築と土木という、隣接する技術分野のあいだには日常的には画然と守備範囲が分かれてしまっている。同時に汗を流す駅や空港のプロジェクトでも明瞭な棲み分けがあるが、よりよい解を目指すなら、望ましい「かたち」をうまく設定して最初から協働を試みるべきである。それが好ましい結果をもたらし、社会的評価が得られたなら、次の取り組みへの確実なプロトタイプとなるであろう。これらに限らず、さまざまな国内状況を変換させようと思うなら、「かたち」は効果的な役割を果たす。それは震災復興においても有効であろう。いずれにしてもつなぎ替えにおいて必要なのは、成果に至るまでの実現プロセスを適切にかたちづくることである。建築でも土木でも、お互いが信頼しあって「きれいな解」を追求するプロセスは、今必要だ。
ところで、つなぎ替えは国際的にも進められるべきである。そのためにも国境を越えた理解を拡げることが重要である。そのための格好の機会がUIA2011東京大会と言えよう。124の国と地域から建築家が来日してくる。それはかなりの分厚い経験となるであろうし、多くの出会いをもたらすことは確実である。災害に向きあう日本での開催は、迎える側も訪れる側も、新たな価値を生み出すできるチャンスである。ちなみに、2ヶ月先にある開幕に向けて、大会組織委員会の運営部会長である私は細かいところの設営について知恵をこらす日々のなかにある。