2020/05/13
No. 720
5月に入っても、新型コロナウィルスとともにいる世界という構図は変わっていない。ここまでの各国のリーダーたちの采配の巧拙はいろいろだが、その評価はここでは言うまい。そもそもどの手が有効であったかはまだこの時点で断定できないのである。しかし、次の困難な事態(コロナに限らず)において参考にできる取り組み方は学んでおきたい。ずっと国や地域ごとに閉じながら感染を防いできたが、克服する対象は同じなのである。
実際のところ、数値目標・制御範囲設定などで足並みがそろわなかったのは見ての通りであり、日常から一層のグローバルな相互連携を進めておくべきであろう。詫摩佳代・東京都立大学教授が述べるように「健康を守るための国際協力は、感染症などの外敵に対抗しうるのみならず、国際社会の平和や友好といった内なる結束を固めることにつながりうる」からである(*1)。
そこでのポイントは、やはりデジタル改革。5月5日の日経新聞(*2)は「ITや民間活力の導入という21世紀の世界標準から取り残されてしまったままでは、ウィルスとの闘いに勝つことは難しい」と手厳しい。もちろんこれは日本を念頭に置いている。さらに「強い権限をもった行政システムが20世紀の日本の成長を支えたが、その成功体験が21世紀モデルへの転換を阻んだ」と記している。オンラインによる診療や教育への準備がもう少し整っていたら、政治は思い切った状況判断ができたかと思う。
それでも現実に舵は切られた。試行錯誤はあっても前向きに動くことを期待したい。すでに民間ではオンラインビジネスはどんどん定着している。WEB会議はさまざまな場で活用され、たとえばArtStickerやPeatix経由によるオンライン購買・セミナーは自粛期間が続く間に進化を見せている。後戻りする方が無理であろう。このコラムの前回では「建築主や行政を巻き込んでのデジタル改革に取り組みを進める好機ではないだろうか」と書いたが、建築界も、ポスト・コロナを展望して動くべき局面に入った。
*1「人類と病」中公新書2020.4
*2 青木慎一・科学技術部長による署名記事