2024/07/24
No. 927
コロナの最危険期を過ぎて、まちには外国人観光客を普通に見かけるようになった。意外な場所に人気が集まっているのも面白い。それはさておき、こうしたインバウンド増だけが経済の柱ではないのだが、日本が有する自然の価値や文化価値を確かめに多くの人が訪れるのなら大歓迎である。そのためにスムーズな移動や滞在環境をつくるのも大事で、そこから富裕層の長期宿泊というパターンが定着すれば経済効果も高まるだろう。がしかし、観光についてはもう少し掘り下げて考えてみたい。
政府の「観光立国推進閣僚会議」の最近の開催記録を首相官邸のホームページで読んでみると、地方空港の充実やオーバーツーリズム対策が急務とある。政府はここに本腰を入れているようだ。特に後者は、生活環境あるいは動植物の生態環境を守るためにも、エネルギー消費を低減するにも、静かに価値あるものと向き合うにも意義がある。そのための基盤をつくる政策なら納得できるが、さらに環境への配慮が整った観光施設・宿泊施設をつくる流れにつながればなお良い。それは新たな地域の価値になりうるから、政府が肩に力を入れる以上に、地域が主体的に日本の新たな価値を創る努力も必要である。
加えて、かけがえのない価値を大切にする国民と長く連携したい、と思わせることはさらに大事なのではないか。ビジネスや地域交流では、価値観が共有できること、長く付きあう意義があると感じることは基本だから、人やコミュニティの魅力こそ重要であり、それが結果的に国の印象を高めてゆくのは間違いない。新たな人材が日本に定着するのもいいだろう。その点では、自由な学びを可能にする教育環境づくりや、人と人が交わる場の活性化などに希望を感じる。制度の改革を含めた長期的な戦略づくりが、経済における結果をも導くことになる。