建築から学ぶこと

2010/11/24

No. 255

そこに、橋を架ける

「企業スポーツ」を継続している企業には、選手生活を終えても使える人材を育成するところもあれば、チームスポーツを企業の活力の象徴として重視するところもある。しかしながら、全般的に厳しい状況に直面している。企業が選手を抱え続けられない理由として、経営自体の厳しさ、企業合併や生産施設の海外移転による拠点減少など、個別には避け難い事情がある。そのいずれのケースも、スポーツ自体が自立していなかった現実が浮かびあがる。加えて言えば、企業協賛の多寡によって大会開催が左右されてしまうケースも、選手にとっては不安定なものだ。

そこで、日本オリンピック委員会(JOC)が提唱する「ワンカンパニー・ワンアスリート」がどの程度実効があるのか興味がある。これは一企業が一人の選手(チームスポーツならチームの中の一人)をサポートする方策で、JOCと経済同友会がそのマッチングにかかわる試みだ。このやりかたをもっとコンパクトに実施するなら、一企業=選手の一(あるいは複数)ゲームというのもあるかもしれない。複数のサポーター=一企業というのもあるだろう。ちなみに、こうした関係づくりは音楽家サポートにも使えるかもしれない。

以上挙げてきた現状にあって考えることのひとつは、企業が選手を支配する感覚を持つべきでないことである。優れた選手はその分野のプロであり、十分に敬意を払うべき相手である。企業がサポートの見返りとしてユニフォームにロゴマークを纏ったりすることは必要な条件ではなく、選手に帰属してよい点ではないか。もうひとつは、企業が有名選手サポートに走らないようにすることである。スポーツには多様性が伴うことに意義があり、公正な手続きのもとに、サポート行動を長続きさせなければならない。たぶん、現状の最大の問題はお互いがお互いの世界を知らなさすぎることにある(*)。だからそこにきちんとした橋を架ける必要がある。

佐野吉彦

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