建築から学ぶこと

2021/12/01

No. 797

BIMの土壌を耕す

BIMを切り口にしたアイディアコンペ「マロニエBIM設計コンペティション」のことは、2019年のこの連載第693回第699回で触れた。学生もプロも参加条件を付けず、制限時間内で作品を作りあげデータで提出するもので、BIMの可能性と魅力を示し切る、年一度のコンペである。栃木県建築士事務所協会(以下、栃木会)によって2015年にスタートした。2019年から日本建築士事務所協会(以下、日事連)との共催となったあたりから、私も運営と審査に参加している。選抜された参加者が宇都宮に集まって最終審査に臨むスタイルで来たが、新型コロナウイルス感染症の昨年と第7回の今年は、審査員だけ本部に集合したオンライン審査となり、思いがけず新機軸が実現した。

このコンペには、BIMの裾野を広げるねらいがある。もともとBIMに熱心に取り組む栃木の地で自発的に生まれた試みが、日事連が関わって全国を巻きこむ企画へと成長し、さらに国土交通省の助成が加わった。今年はそのような流れの中で、栃木会が引き続き支えながら、福岡県と熊本県の建築士事務所協会が主管する新機軸で運営するかたちになる。最終審査は1126日に熊本市内での開催であった。

福岡も熊本もBIMに先進的に取り組む土壌があるので、最良の運営移管と言えるだろう。コンペ対象敷地として熊本地震の甚大な被災地である益城町を選んでいるが、そこに震災からの復旧復興に2県の事務所協会が連携した背景があり、BIMを長期的なまちづくりに役立てたいとする社会的使命感を盛り込んでいる。それはまさにBIMデータを長期的に生かし、社会課題を解決すべきとの、現在の認識に合致するものだった。

今年の最終審査に残った9提案は特設サイトを見ていただくとして、審査員である堀場弘・池田靖史・西田司・大西康伸・佐々木宏幸・岩本茂美・南孝雄各氏と私は、切れ味と希望の灯る案と向きあった時間に手ごたえを感じている。来年のコンペの主管地は決定していないが、このような機会に各地でBIM人材が育ち、BIM文化が深まれることを願うものである。

佐野吉彦

オンライン審査会場はこのような風景

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