建築から学ぶこと

2012/09/05

No. 340

マガジンに潜む可能性

Archizines(アーキジンズ)と呼ばれる展覧会が大阪でスタートし(9/1-9/17 中之島デザインミュージアム de sign de)、続いて東京で開催される(9/21-9/23 京都造形芸術大学・東北芸術工科大学外苑キャンパス)。2011年末にロンドンで開催された「建築出版物の展示」という企みの日本巡回である。さまざまな意図で発刊された世界各国の雑誌、現代の建築家による自主制作本などが、きれいな空間づくりの中で楽しめる趣向だ(後者の展示は「アーキテクトジン」という名のコーナー)。ここで扱われているのは、建築そのものを前面に押し出した作品マガジン、論考のアンソロジーなどで、どちらかと言えば一般雑誌と異なる思い切りの良さが特徴となる。

私はこの企画に携わったRADの川勝真一さんから紹介されて、企画をサポートすることになった。建築に関わる者にとっては、多様な方法論を存分に楽しめる機会であるが、会場をじっくり歩いてみるうちに、この面白さを他分野のプロと共有したいと思った。そこで、能楽師や医師、音楽家などに奨めてみた。かれらはこのようなマガジンのつくりかたをどう捉えるだろう?ちなみに、大阪の近代建築のオーナーは、すぐに飛んでいって面白いと言ってくれた。

たとえば音楽界は、いくら切れ味がいい演奏を達成できても、雑誌や演奏会のパンフレットといった制作物の切れ味にはやや不満が残る。制作物が下手な演奏を引き上げはしないけれど、お互いが呼応しあうと世界はより広がるであろう。マガジンは専門家と社会をつなぐ武器たりうる。今回展示されたマガジンには巧拙があることは認めるが、短命だからとか、フライヤーでしかないからとかいう理由は存在しない。巧なるものには、勢いがある。あるいは勢いをうまく掬い取っている。

佐野吉彦

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