建築から学ぶこと

2007/05/23

No. 83

向きあっているテーマ: 続・サンアントニオ

サンアントニオのAIA(アメリカ建築家協会)大会では、私自身もセミナーに登場した。Organized Design Team in Japanとタイトルを名づけ、日本の設計組織がクライアントとの関係性のなかからどういう知恵を学び、組織を組み立ててきたかを講演した。アメリカではデザインビルドが大きく普及する流れの中で、いかにArchitectがその立場を確保しつづけるかを真剣に探っているので、日本流の建築のつくりかた(project delivery)がどうなっているかに関心を持っている人が、少なからず居る。もっとも、私はどのパターンが最良であると主張したわけではなく、また日米間の決着をつけに来たわけではない。みんなで適切な進めかたを考えよう!というメッセージを発信したわけである。

さて、このところのAIA大会で定例的に開催されるプログラムにPresidents’ Forumというものがある。ホストはAIA会長。JIAを含む各国の建築家団体のトップが年1度集まって意見交換をする場である。3年に1度のUIA(国際建築家連合)より、インタバルは短い。ネットで情報が容易に共有されている現代は、日常的にいろいろな課題が共有されている。言わばこのプログラムは、短時間でその交通整理をするような場だ。

第1のテーマは、サステナブルデザイン。ここ1-2年、環境問題をめぐってはアメリカの意識も変わってきた。この分野は、日本の建築の専門家が大いに貢献できる場面であろう。第2のテーマはオフショア・アウトソーシング、第3はWTOのとの関わり方である。情報技術の進歩は国際的な活動連携・データの交換と統合を加速させたが、問題点も増殖する。これが第2で扱った内容だったが、第3も連動するもの。知的所有権や労務にかかわる課題は、各国で政府と個別対応するだけでなく、Architectが国際的に協調して考えるべき、という議論であった。第2・第3は日本が遅ればせながら関心を深めるべき問題である。なお、このプログラムにはUIA会長(ガエタン・シュー、モーリシャス出身)も参加しており、UIAのテーマとして扱われるものだ。

職業としてのArchitectは、国際的にどう適切に連携し、社会の中でどういう役割を果たすべきなのか。一連の行事はそうしたことを考えさせる機会なのであった。

佐野吉彦

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