建築から学ぶこと

2024/03/20

No. 910

まちが仕上がってゆく―西梅田にて

大阪の「キタ」、JR大阪駅周辺のまち並みが変貌しつつある。北側のグラングリーンは秋のオープンに向けて、工事が佳境を迎えている。一方で駅の西、いわゆる西梅田エリアのJPタワーは完工間近で、先般、入居するSkyシアターMBSが先行披露された。この劇場のすぐ南に大阪四季劇場、さらに南にサンケイホールブリーゼといった器が入居する複合ビルが南北に3つ並ぶことになった。これぞ中空に浮かぶ劇場街と名付けてもいい。いずれも、個々にある前身の活動を発展させる形で腰を据え、連動しながら西梅田エリアを活気づける。このあたりは、かつては大阪のエッジとも言える場所だった。そこに3劇場が姿を揃える意義は大きく、キタの賑わいの重心が満を持して西に動く予感がする。
劇場を主役に押し出すのなら、シドニーオペラハウスやニューヨークのリンカーンセンター、東京では新国立劇場を含む東京オペラシティの街区のように、複数の劇場をパッケージにして、人の動きをゆるやかに囲い込むのもひとつの理想である。建築の形態も印象に焼き付けやすいだろう。だが、そのようなケースであっても、人の動きがまちに自然につながってゆくことはさらに重要である。それはまちの経済を潤わせ、時間をかけて街を成熟した表情に変える。
かつて、同じ大阪の「ミナミ」のエッジであった道頓堀エリアは名高い劇場街だった。そこは、東京の浅草も、ニューヨークのブロードウェイと同じく、芝居が街に染み出るようなイメージがあり、そして程よい猥雑さが今もある。それと比べてみると、今の西梅田は清潔に整えられた複合ビルが並ぶ景観なので、けれん味が不足するかもしれない。駅に近いのは大変便利なので、上演後に繰り出してゆけるレストランやバーが繁盛するようになると、いい感じの街に仕上がってゆくだろう。

佐野吉彦

JR大阪駅とJPタワーの連絡口

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