建築から学ぶこと

2007/06/27

No. 88

企業を探して

今春の大卒の就職活動、すなわち来年入社の新卒求人活動は事実上シーズンの峠を越えた。6月に入ってからは、再来年入社のための準備活動がスタートしている。大学生なら3年次、まだ専門を極めていない時期。早すぎるのでは?という印象もあるが、学校は、今が自分の適性を見極める時期、と早めの意識づけを促す。選択肢の広い文科系の学生には親身な指導かもしれない。その背景には、就職に強い学校という結果も欲しいという事情もある。

今年は新卒求人総数が大きく増加した。そのなかで、希望が集中する人気企業は、選考の手順を何度も踏んで人材を選別する余裕がある。だが、知名度が低く採用数が少ない企業は一層真剣だ。就職希望者数自体は伸びていないからである。必ずしも思惑通りに行かないこうした状況を、うまくネットワークする「就活ビジネス」もいろいろと生まれているようだ。
学生サイドはこれから半年ほどかけて情報を集め、会社訪問に出向き、自分の目指す職種・企業を探し出してゆく。年が明けると始まる選抜のためのエントリーも、最近は専用ウェブを窓口にする傾向がある。この敷居の低さゆえ、今や100社エントリーする学生も珍しくないらしい。もっともこの数は男子学生の場合で、女子は自分を活かせる企業・働きやすい企業を見極め、もう少し絞り込むという。何はともあれ、採用する側もされる側も、敬意を表するに値する熱意である。建築の設計という職種の場合、これほど早いペースにはならないのは。修学内容の延長線上に実務があるからか。絞込みも選抜も比較的シンプルに見極めやすいからだろう。

ところで、大企業が採用に多大な手間をかける背景には、何らかのマーケティングリサーチを目論む意図が見える。就活シーズンのなかで、企業は自らが与えるイメージを把握し、学生は多数のサンプルのなかから最適企業を探しあてる。この段階まで交わりにくかったどうしが結びつくことは、それぞれにとって新たな視点を獲得するチャンスであるようなのだ。

佐野吉彦

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