建築から学ぶこと

2024/01/31

No. 903

人を惹きつけ、建築を開くー生きた建築ミュージアム大阪

「生きた建築ミュージアム大阪」が、一般社団法人に改組された。普段公開の機会が少ない建築を街に開く取組みで、魅力たっぷりの近代建築がそのメニューを構成する。主事業「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」(イケフェス大阪)が開催される10月の週末は、快適な気候のもとで建築を訪ね歩くにふさわしい。昨年秋は過去最高の6万人の動員を実現した。もともとは2012年の大阪市による「生きた建築ミュージアム事業」開始で、2016年から官民連携の実行委員会形式となり、民間提唱で事業を進めるかたちに段階を経て進化してきた。世界各都市の同様の試みをつなぐネットワークOpen House Worldwideにも加わり、むしろ世界をリードしている。もちろん、国内都市のオープンハウス企画の立ち上げにも影響を与えてきた。運営をどう安定させるかについても模範例となっている。
この活動は、大阪に本社あるいは拠点を構える企業が温かく支える環境に恵まれてきたと言える。それぞれの企業が文化的に価値の高い自社の建築資産を維持、あるいはうまく活用しているのは心強い(大阪ガス、ダイビル、千島土地、竹中工務店、大林組など)。それゆえ、それぞれの社員が建築を公開する意義を感じて「イケフェス大阪」運営に寄与しているというわけである。自負したいのは、安井建築設計事務所が日建設計や東畑建築事務所とともに、設計事務所のスペースを市民に開く取組み「セッケイロード」を始めたことである。その後毎年、参加する事務所数が増え、創意工夫を楽しく競っている。
「生きた建築ミュージアム大阪」の展開の先には、大阪の各地点が個性を宿しながら上手に活性化する可能性があり、建築を通じた大阪のストーリーづくりがあり、人を都市に惹きつける理論構築がある。これからは建築以外の学究などがイケフェスの動きに加わることも期待する。きっと2025年万博のサブメニューとしてもうまく機能するだろう。

一般社団法人としての設立は9月20日で、代表理事は橋爪紳也さん。1月23日の社員総会と発足式で12名の理事名簿が確定している(私もそのひとり)。

佐野吉彦

楽しく増殖するセッケイロード。

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