建築から学ぶこと

2022/06/15

No. 823

室内楽という、制約のある形式を持続する意思

弦楽四重奏(バイオリン2+ビオラ+チェロ)とピアノ3重奏(バイオリン+チェロ+ピアノ)の名曲はいろいろあり、演奏の機会も少ないわけでもない。しかし、それを本業としてキャラクターを確立できたアンサンブルというと、実数は限られてくる。単に巧い奏者を3人集めてもいいチームにはならないことは、スポーツの団体競技を思い浮かべれば自明だろう。大事なのはそこにチームとしての明瞭な意思があるかである。あるいは、それぞれがチームを持続するために何をすべきかを考え抜いているかどうかと言うべきか。

そのなかで、サントリーホール室内楽アカデミーで育った「クァルテット・インテグラ」や、同じく活躍目覚ましい「葵トリオ」はひときわ安定感があり、そして輝いている。6月のサントリーホール(ブルーローズ)でのこれらの若い世代のアンサンブルが生み出した音楽には熱い体温があった。多彩な曲を選んで筋を通すプログラムの構成も見事で、決して今回きりの瞬発力ではないことが伝わってくる。ちなみに私はどちらもオンラインで聴いてそう感じたのだが、前者はサントリー知多蒸溜所(愛知県)の開設50年式典に登場し、さりげなく3曲を披露したら、音楽目当てで来たわけではない出席者の関心をも瞬時に惹きつけていた。あ、これはBGMの音楽などではないのだ、と皆が感じ取った場面に私は立ち会うことができた。これなら世界でも戦ってゆけるだろう。

それにしても、室内楽は奏者の掛け合いがスリリングで面白い。それが地味だという評判があるとしたら、凡庸な演奏を聴かされすぎているからなのだろう。でも、制約のある、どちらかと言えば保守的なスタイルを通してチームとしての表現を追究し、このフィールドで活動し続ける覚悟が伝わるなら、心撃たれないはずはない。そうしたことはどのような仕事にも共通する話であるのだが。

佐野吉彦

サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2022

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