建築から学ぶこと

2013/07/17

No. 384

都市に折りたたまれた帯

久しぶりに福岡の大濠公園を周回ランした。眩しい夏の朝である。第154回でも触れたが、このパブリックスペースは実に心地が良い。その名のごとく福岡城の外濠でもあり、この一帯にはこの都市の豊かな歴史が積み重なっている。鴻臚館(こうろかん)遺跡、福岡マラソンルートのゴールである平和台陸上競技場、かつての平和台球場跡も同じ福岡城内にある。大濠の226,000㎡の池の周回はちょうど2キロで、多様なスピードが共存するために、内側から散策路(ウォーク)/植栽帯/内周路(ラン)/外周路(自転車)がきれいに並行する。適度に変化するカーブ、要所のランドマーク(ボートハウスや美術館)が退屈さを感じさせない。そのこともあってたくさんの市民が集まっている。大濠から世界にはばたいたランナーたちは、それぞれが選んだ走路から目標に向かっていったであろう。余談だが、たいていの場合、私は駅前に宿を取るので、そこから渡辺通りを走り、中川を渡り市場を行き過ぎ、街路樹が並ぶ赤坂から緑濃い護国神社脇を経て大濠にたどり着く。これは福岡を身体になじませる(個人的な)メインルートと決めている。

ところで、福岡市の中核部は、中川の西の福岡と、東の博多の組みあわせでできている。7月は博多サイドの豊かな歴史を体現する「博多祇園山笠」の季節。街角あちこちに山笠が建ち、クライマックスの<追い山ならし>・<集団山見せ>・<追い山>では、静の「ランドマーク」が街をダイナミックに疾走する「帯」に変わる。本番である<追い山>の「帯」は櫛田神社から数度折り返して須崎町に至るのだが、7月以外のこのルートは、街の中にひっそりと潜んでいる。実はそれが博多の歴史を受け継ぐ大事なルートであるところに、都市の節度を感じる。京都における祇園祭も同じことだが、いいまちは、いくつもの見えないルートでできあがっている。

佐野吉彦

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