2022/03/16
No. 811
イコモス(ICOMOS)とは、1965年に設立された国際記念物遺跡会議のことで、文化遺産保存に関わる専門家が所属している。一般的にはユネスコの諮問機関として、世界遺産の審査やモニタリングを担当していることで知られる。各国に国内委員会があり、日本では1979年から「日本イコモス国内委員会」の活動が始まる。ここでは文化遺産の活用に関わる優れた業績に対し、「日本イコモス賞」を毎年2-3点選定してきた。私が運営の一員に加わっていた、近代建築を対象とする<第16回DOCOMOMO国際会議2020東京実行委員会>(2021年開催)もそこに名を連ねたのは嬉しい(1月発表、先日受賞者記念講演)。その他の2業績も、さまざまな専門家と市民とが協働するチームをつくり、時間をかけて成果を挙げた粘り強い取り組みである。つまり、いずれも多くを巻き込むことで実行組織が厚みを増し、長く続けることで本気度が伝わった、というプロセスと言えるだろう。
さらに実感するのはそこにあるダイナミズムである。参画メンバーが増えることによって、新たに混ざってくる知恵のなかから使える知恵が取り出せる。また、長く続ける中で難局に直面する可能性が増え、それを乗り越える知恵を絞り出している。発散しつつ凝縮に向かい、停滞が新たな選択肢の発見につながっているのは興味深い。DOCOMOMO国際会議という形式は今後も続くものだが、大会運営システムを安定させる工夫以上に、個々の大会がどのような<種>を残しているかが重要となるだろう。東京での大会はCOVID-19の状況下にあったことから、準備や実際の大会運営のなかで、オンラインを使いながらいかにリアリティを感じさせ、価値を分かちあえるかを追究する実験場になった。また、東南アジアにおける近代建築への関心を呼び起こす着実な取り組みも画期的であったし、それらはイコモスの活動発展にとっても豊かな可能性が宿った<種>となるはずである。