建築から学ぶこと

2009/10/28

No. 202

つなぐことで、何かが起こる

末廣香織さんと松岡恭子さんという福岡を基盤にするプロフェッサーアーキテクトが、自らのフィールドに興味深い仕掛けをした。MAT fukuoka (Modern Architecture Tour in fukuoka: 福岡・近現代建築ツアー2009)と呼ばれるこのプロジェクトは、8月の3日間、福岡の名建築を市民に公開する試みである。その運営とガイドは九州大学・東京電機大学・チュラロンコン大学(タイ)の学生が主要な役割を果たしていた。松岡さんによれば、ガイドを担当した学生は、どのように市民に建築を具体的に理解させるかを工夫していたようで、学生はおおいに成長し、MATも成果を挙げたようだ。同時期におこなわれた3大学学生によるワークショップも充実したものだったという。

市民がいつも眼にしているものについて知らない、というのは残念ながらよくあることだ。知っていれば、活性化する施設や経済があるかもしれない。それを解決するには、ふだん離れている関係を丹念につないでみるのがよい。人から人に伝わることのなかから、都市の大きな知力・戦闘力が鍛えられるであろう。

こうした基本的なことを続けてやってみると、時に急激な変化が起こる。安井建築設計事務所の大阪オフィスは中央区の北大江地区にあり、われわれはそのまちづくり実行委員会の一員でもあるのだが、そこでの変化も不思議なものだ。職住併存のこのまちで、自転車の迷惑駐車や一帯の清掃を10年ほど続け、北大江公園の再整備に取り組み、その公園で自主制作の野外コンサートを開催するなどの活動に加わってきた。その活動の中から、この地区に楽器の工房がかなりあることがわかり、ネットワークは意外な広がりかたをした。今年は、公園のまわりの工房やレストランなどを使った30本の同時開催シリーズ「北大江たそがれコンサートWeek 2009」(10月18日-24日)に進化したのである。

それに先立つ9月、音楽関係者に北大江のことを話してみたら、あっ聞いたことありますよ、という反応があった。つないでみると「青いバラ」が咲くことがある。いつのまにか、著名な奏者も登場する<音楽のまち>にイメージが変換されていたのである。

佐野吉彦

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