建築から学ぶこと

2006/01/25

No. 18

1月17日は学びの日

阪神・淡路大震災から11年。10年の節目を過ぎたあとの今年からは、この経験をどう継承するかについて着実に取り組む作業が始まる。まずは、何がその瞬間に起こったかを正確に語り継ぐことが必要であるが、さまざまな断裂と消失を縫い直してきたプロセスについて、そしてどういう知恵が集約されたかについて、きちんと見ておくことが重要だ。それが次への教訓につながるからである。

たとえば、発生直後から活動した多くのボランティアは、被災地に勇気を与え、被災者相互を結び合わせる役割を果たした。このことがNPO法の早期成立につながり、またその後の災害救援における自発的な動きへとつながった。土地区画整理事業や復興再開発事業においては、住民と自治体が協力しあって理想的な地区像をつくっていったケースが多く見られるが、この震災はそうした協働による取り組みの始まりとして記憶されてよい。

復興には、そうやって目標を達成した地区もある一方で、10年経っても震災前の人口が戻らない地区も目につく。概して、芦屋や神戸東部に比べて、神戸西部の戻りが弱い。この現実にどう向き合うか。私は、まだ10年と考えたい。平時においてもまちづくりには時間がかかるものであり、これからが復興の正念場と言えるのではないか。

建築をつくることは、さまざまな困難を解決する行動である、と思う。住民にとっては、災害復興を通して建築をいかにつくるかを学ぶプロセスでもあったが、専門家にとっては、このステージで専門技術がどういう貢献ができるかを掘り下げる機会となった。まさしく職能の原点である。災害は決して望むものではないが、社会のありようや個人の精神を学びなおすきっかけとなる。

1月17日は「防災とボランティアの日」として制定されているが、建築にとってはとりわけ重要な意味を持つ日である。年々重みを減らす感のある成人の日は脇に置いて、1月の中のかけがえない一日として位置づけてはどうか。

佐野吉彦

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