2014/12/03
No. 452
建築をつくるプロセスは、建築設計者が発注者や社会に対して誠実な聞き手となることで磨きあげられる。だからこそ、できあがった建築は、有効な情報が統合されたデータベースとなるのである。こうした一連の論理は古今東西変わることがない。われわれがBIMを活用するにあたっても、そしてそれが国境をまたぐツールとなっても、その骨格は揺らぐことはないだろう。11月から12月に刊行された安井建築設計事務所の90周年特集号([建築画報]誌、建設通信新聞、日刊建設工業新聞、[建築と社会]誌)にはそのような確認をし、主張をこめてみた。
各メディアの中でおこなった対談は、以上のようなことを補強することになった。横山禎徳さん(社会システムアーキテクト)とは建築設計者のプロフェッションの将来について語りあった。建築設計が当然身につけるべき能力は、すべてのプロフェッショナルが獲得すべき能力を先取りしている。課題を的確に設定し解決に導くことは、建築設計者には古くて新しい能力なのである。知能ロボットの可能性を追究する浅田稔さん(大阪大学大学院教授)とは、人間のコミュニケーションの未来について。ロボットを研究するひとつの目的は、人間に固有の能力とは何かを考えることである。現在の情報ツールを組み合わせながら人はいかに能力を高め、研ぎ澄ませることができるだろうか。
考古学者でもある青柳正規さん(文化庁長官)とは、建築は人間の文化を形成する大切な要素だという確認をしあった。保存と修復に留まらず、価値あるものを再活用して「アップサイクル」すべきだと、青柳さんは言う。取手アートプロジェクトの同志でもある森司さん(アートプロジェクト・ディレクター)には、人と街の育て方について聞いた。彼が言うように、都市や地域が変わろうとするときに、ある分野の専門家がいると、そこで未来の見え方は変わってくるにちがいない。
自らの位置を確かめる作業は重要である。今回のように、骨のある人たちとの対話の中で学んだり気付いたりすることは多い。まるで人生の体幹トレーニングのような時間であった。