建築から学ぶこと

2023/02/15

No. 856

前向きな人材を育てるために

いま国土交通省が注力している政策では、建築物省エネルギー法の円滑施行と目標達成、建築基準法改正関連[木材活用、4号特例の縮小、災害に対応する改正事項]、設計報酬基準の改正などが、建築実務者に近い住宅局所管である。BIMの普及推進については、広域データベースPLATEAUを推進する都市局と連動しており、これは政府の重点政策であるDX推進政策のレールにも乗っている。国が進めている以上のような方向は、設計事務所の現在と将来に関わってくる。
そう言えば、1990-2000年ごろは、外圧が建築生産のかたちを揺さぶっていた。現在は、グローバルな課題の多様化、ようやく進みだした働き方改革、建設従事者の不足、そしてコスト高が変動要因であり、こうした動きも旧来の取り組み方を確実に変える。重要なのは、前例のないプロセスで設計事務所が、建築プロセスのリーダーシップをきちんと取れるか、変革の局面をビジネスチャンスと捉えているかである。法改正や環境変化に順応するだけでは何も始まらないが、先取りする行動はチャンスにつながるだろう。
私は今月講師を務めた建築士事務所協会の研修[開設者と管理建築士のための管理研修会]で、そうしたメッセ―ジを加えてみた。実際のところどの国でも、建築の設計報酬基準は<かたち>という結果によって建築の価値が決まるよりも、設計プロセスを的確にこなすことで誰かの財布が開くように構成されている。そういう基準を是としているのなら、国土交通省(に限らず)の政策は、前向きな人材を育てるアクションが重視されてもよいのではないか。2006年の建築士法改正では、建築士の定期講習の義務付け、すなわち生涯にわたる研鑽が義務付けられたが、それ以上に、自発的な取り組み、自らプロジェクトを生み出す気概の醸成が日本には必要である。

佐野吉彦

人が動く、人を動かす(仙台駅)

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