建築から学ぶこと

2019/09/11

No. 687

BIMは果たして大きなうねりとなるか

この6月から国土交通省は、学識経験者や関係諸団体を召集して「建築BIM推進会議」を開設した。9月初めまでに3回開催された全体会議の議事内容については、国土交通省のサイトで公開されている。そのページの冒頭にあるように、会議は「官民が一体となってBIMの活用を推進し、建築物の生産プロセス及び維持管理における生産性向上を図る」ことを目標としている。その成果が達成されるまで会議体は設置されるようだから、国土交通省も建築BIMには本腰を入れている。
今年度後半は、官が中心となってまとめる「BIM標準ガイドライン(BIMワークフロー)」、日本建築センターが主担当する「BIMを活用した建築確認検査の実施」など、諸テーマを究めてゆくことになった。なお、現実には建築分野は民間発注が大半なので、これらの取り組みは官庁プロジェクトでの活用だけでは留まれない。さらに、「活用を推進する」ことには、小規模建築物の設計・施工を含む幅広い領域でのBIMの活発化が含まれるだろう。私も会議メンバーのひとりだが、ぜひ広角な戦略づくりを望みたい。
一方で、BIMの進展には、社会資産の明瞭化・最適化というターゲットがあったはずである。それゆえに、設計者や施工者だけでなく、発注者・維持管理者がBIM活用を有益と実感することが、早期のBIM浸透にとって不可欠である。初期投資と人材育成に手間がかかる現状のBIMを大きく改善するためには、より多くの立場と視点が加わっての追究が必要だと思う。まず、それは忘れてはならない。その先で、BIMを通じて建築生産から維持管理にいたる流れをスマートに変革することに成功すれば、市場改革にも国際競争力向上にも大きな効果をもたらすことは確実である。最終的にはそれぞれのプレイヤーがBIMで起こる建築界の変化を経営転換のチャンスにできるのか、見ものである。

佐野吉彦

「BIMが目標としてきたこと」(佐野作成の一部)

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