建築から学ぶこと

2022/11/30

No. 846

スポーツ文化から眺める、BIMのこれから

マロニエBIM設計コンペティションは、BIM活用によるアイデアを競う機会として、2014年に栃木県建築士事務所協会の手でスタートした。BIMの普及に資するねらいを引き継ぎ、2019年からは日本建築士事務所協会と共催の全国規模のコンペとなり、さらに昨年は福岡、今年は宮城の建築士事務所が応募テーマを設定し、運営主体となった。こうして、ローカルなレベルでのBIM定着を図る象徴として注目を集め、徐々に地域社会の共感を獲得してきたと言える。
BIMの可能性を拡げる観点から見れば、設計・施工プロセスだけでなく、そのデータがどう活かされるかは、提案で言及すべきポイントとなる。言い換えれば、竣工後の可変性やフィードバックをどう建築が受け止めてゆくかの答えが問われている。だが、その道の先に、生々しい情報を取り込んで建築が自動化してしまう未来が待っているとは限らない。それでは少し危うい感じもする。あくまで建築が使われるときには、所用者や利用者が能動的でなければならないだろう。むしろ、そのために建築をいかに計画し、BIMデータをいかにうまく役立てるかが期待されているのである。
その点では、仙台市・青葉城公園にスポーツ文化の拠点を構想するという、今年のテーマは適切で、BIMの将来に対して示唆に富む。スポーツには、高みを目指す競技スポーツがある一方で、市民スポーツ、さらに新たなスポーツの創成など、様々なありようがある。そのいずれもが利用者の動きと展開によって、建築の形態やランドスケープに影響が及んでゆくからだ。建築の置きかたや場のありかたは、BIMを用いることで、それぞれがデモクラティックに進化してゆくことになるのではないだろうか。建築の価値判断にもそれとともに変化が起こる可能性もある。

佐野吉彦

「マロニエコンペ」公開審査会場

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