建築から学ぶこと

2010/09/29

No. 247

古い館と茶室のある森で

ワシントンDCにある日本大使館敷地内にある旧大使公邸(1931)、一白亭という茶室(1960)は、建築として評価が高いレベルにある。一般公開されるチャンスもこれまでもあったのだが、今年の9月開催のイベント・ARCHITECTURE WEEKにあわせて半日だけ公開された。このイベントとはAIA・DCchapter(アメリカ建築家協会ワシントンDC支部)が運営する、1月続く市民と建築家を結ぶ企画で、講演やワークショップも加わる盛りだくさんな試みである。平常から、AIA・DCの活動は全国団体と連携しているのも特徴のようだが、この9月は、やはりDCに多く位置する各国大使館に働きかけて、いくつかの国をイベント参加に誘っている。

日本大使館に属するJapan Information & Culture Centerはこれに呼応して、施設公開に加えて講演会を2本企画運営した。その1本が<Contemporary Religious Architecture in Japan>という題目の、私の出番である(9月23日)。ここで試みたのは日本の宗教建築の変遷と現代都市のなかで果たす機能である。私の身の丈を越えた試論だが、宗教への思いが強いアメリカ人の興味を引くのではないかと考えたテーマであった。まずは、さまざまな宗教的景観のバラエティを楽しんでもらえたのではないかと思う。

なおこの日、京都の本能プロジェクトの外観がプリントされた大きな「幕」を同時に飾ってみたら、こちらの反応はより敏感だった。幕の前でアメリカ受けしそうな説明、これは学校と老入用の施設が共存する、つまり2つのgenerationが交わるプロジェクトです、と言えば「図ったようなヒット」となった。さて、講演の2日日の担当は<a Moment: Tokyo Under Construction>という名で自作写真を語る鈴木弘之さん。建築・土木の現場を切り出したショットは鋭いけれど、暖かさと希望に満ちた眼差しがある。

このARCHITECTURE WEEKに参加した国は、ほかにフランス・スイス・スウェーデンなどなど。アジアから参加したのは日本だけだから、日本の文化外交もなかなか積極的と言えるではないか。

佐野吉彦

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