2017/11/22
No. 599
さまざまな建築表彰制度の中で、BCS賞(日本建設業連合会)は、すぐれた作品を成立させるために、いかに建築主と設計者と施工者がそれぞれの寄与をおこなったかが審査の基準に据えられる。もちろん建築界を技術面で牽引した作品であるかは検証されているが、作品に宿る「一貫性」が鍵を握ってきた。さて、今年(第58回)選ばれた15作品(+特別賞2作品)を見ると、建築の質の高さだけでなく、利用者にとって最も公平であり、かつそのプログラムが将来的に安定していると思われるものが、「静岡県草薙総合運動場体育館(このはなアリーナ)」と言えるだろうか。日常的にも非常時にも使いやすい計画になっている。大空間を構成する主体構造である、木材・鉄骨・免震支承を合目的に、合理的にまとめあげた建築である。現時点での美しさに留まらず、地域の人々に永く活用されてゆく予感がある。
そのほかで印象的なものが、竹中工務店、TOTO、中埜酢店(ミツカングループ)、YKKが企画した自社施設である。いずれのプログラムも来訪者に対して開かれた姿勢を示しているが、それぞれの企業の技術にかかわるこだわりが示される。興味深いのは、建築計画を標準的な方法で解いてはいないところである。たとえばYKK80ビル(東京都千代田区)では、縦の動線をあえて3箇所に分散することによって、豊かな平面計画、メリハリのある階構成を実現している。TOTOミュージアム(北九州市)は、企業イメージに沿った優雅な3次曲面/空間を達成するために技術を従属させている。おそらく、それら特別な趣を持った建築が永く活用されるためには、建築主がこれからも健全に活動を継続することが条件となる。まさに深い決意と確信があって建築はつくられた。その基底にあるものを建築というかたちに結実させるために、設計者と施工者の創造的精神の発揮があった。すぐれた建築はいつもこのように、何かをしっかりと背負っているものである。
上記作品建築の詳細は下記を参照ください。
http://www.nikkenren.com/kenchiku/bcs/result_year.html?y=2017