建築から学ぶこと

2022/03/23

No. 812

建築の使命について

先ごろ、地方中核都市で特別養護老人ホームが竣工した。住宅の多い地域への移転であり、そこでの5階建はあまりないので、遠くからも存在が目立つ。それでも、外観を細やかに整えたり、近隣住民の集会場としての活用を想定したりすることで、地域に馴染んでゆけそうである。この時点で概ね関係は良好であり、これからさらに続く運営側と住民側の間のやりとりの中から、お互いを必要とする関係が時間をかけて育ってゆくのではないか。単に入居者やデイサービス利用者によって活用されるという観点だけではない。お祭りや災害・環境問題などで地域が助け合う必要があるとき、新参者もやがてキープレーヤーになってゆくだろう。もっとも、この点ではどのような施設機能でも事情は同じである。建築がその地に根を下ろす一連のプロセスとは、人が異なる要素と向きあい、溶けあってゆく流れを象徴していると言える。

それとともに、建築は本来、異質の間柄を和らげ繋げるための格好の手段なのである。ほかの例を挙げるなら、人が新しい職場や学びの場に加わるとき、かれらを迎えるとき、どちらサイドにも多少の緊張感があるかもしれない。新メンバーは組織に活力を生み出す重要な存在であるだけに、その場を適切に整えることは有効である。さらなる例では、緊急時の診療施設・災害や戦争から避難する先でのストレスを軽減することは、人権尊重の基本だと言える。これらは建築だけで解決できるものではないが、建築的手法によってそれを短い時間でスムーズに達成することはできるものである(だからこそ、その対策がどれほどの貢献をもたらしているかを、数値化して検証することが望ましい)。

このように、建築とはきっかけを生む精神的存在であり、成否が問われるリアルな存在でもある。そのことについて、同じようにめぐってくる年度末と、いつもと同じではない戦争のニュースの中で考えている。

佐野吉彦

“さあ、新しいステージへ@日本武道館の卒業式“

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