2013/01/23
No. 359
先日ある空港で、小学生高学年が施設を見学したおりの感想レポートを掲示しているのを見た。男子が概ね飛行機や建築の大きさに興奮している一方で、女子は案内担当のおねえさんが4ヶ国喋ることをカッコいいと感じている。別のある日、電車の最後尾車両で見かけた低学年か幼稚園の男子と女子の兄弟の場合も、男子は車窓から見える車庫にご執心。女子は女性車掌を「女の車掌さん!」と呼び続け、ひとつひとつの仕草に憧れの眼差しを向けていた。
普通に考えるなら、男子はやがて建築や機械をつくる仕事を目指すようであり、女子は接客業務に就くことになるのだろう。でも、世の中はそう単純ではないのが面白い。そういう男子がいい建築主になれば建築界は喜ぶべきだし、女子がすぐれたコミュニケーション力を持つ建築家になるのを想像するのはさらに楽しい。かれらはどのような人生を選ぶだろうか。
さて、先日SANAA(妹島和世+西沢立衛)の仕事ぶりをNHKが特集番組で紹介していた。かれらの仕事に対する真摯さには大いに敬意を抱くものであり、信念を持続する姿勢は立派である。ちなみに、バブルの時期に30代の妹島さんはまだ仕事に恵まれていなかったが、旺盛に仕事をしていた同世代の建築家はずいぶんいて、その多くは健在である。ある者はこの時代の経験をもとに建築を賢明につくる術を身につけ、ある者はやんちゃさをうまく洗練させた。バブルの時代は建築家にとって格好の修業の場を与えたという意味では、番組が述べるようなネガティブな時代ではないのである。
特筆すべきなのは、妹島さんを含めてかれらはその後を健気に走り抜いてきたことである。長く続けることには価値がある。建築を始めてから一貫したスタイルであろうと、スタイルが変わろうと、その仕事を長く続けた成果はやがて社会が認めることになる。