建築から学ぶこと

Learning from Architecture

2019年10月に学ぶもの

  • No.695
  • 2019年Nov6日

この秋の日本は、皇室の慶事が人々の心を穏やかにさせた一方で、東日本の度重なる風水害や、沖縄・首里城正殿ほかの消失のような予想を超える出来事に見舞われた。双方とも、失われたハード以上に、辛うじて踏ん張っていた産業基盤や、戦災を乗り越えて継承してきた文化財の損害が甚大である。今後を考えると、建築と土木の強靭化だけではない対策が必要であろう。どうやら第692回で記した課題だけでは足りなかったようである。とりわけ前者は、起因である環境危機は時間が切迫していることを示しており、第690回で扱ったグレタ・トゥーンベリさんの警告をさらに噛み締めなければならない。
ところで、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのマラソン・競歩会場が札幌に移る決定は驚きだった。ほかにも10月には、文科省が計画を進めた英語民間試験導入の突然の延期、チリ政情不安によるCOP25開催地のスペインへの変更(ブラジルからの再々変更)、Brexitの幾度もの繰り延べ(香港と同様に解決策が功を奏していない)などがあり、後世に「直前回避の季節」として記憶されるかもしれない。それらは、ある意味では事態に鑑みた、政治の英断である。だが、事前の覚悟は十分だったのだろうか。関係者には失礼な言い方だが、準備に長い時間をかけながらも、議論をじっくり煮詰めなかったことのツケが限界に来ていたように思われる。
重要なのはこの秋に突き付けられたさまざまな現実が、未来に向けて前向きの展開をもたらすかどうかである。これを機会に、日本のエネルギー問題は先送りせずに正しい選択をしようとか、まずはオリンピックの夏季に一都市開催というスタイルを見直そうとか、前例にとらわれずに踏み出すことはできないか。100年前の1919年に、建築基準法の原型となる法をスタートさせ、バウハウスを開校させたエネルギーは今あるだろうか?

  • バウハウス展/西宮市大谷記念美術館(-2019.12.1)

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