建築から学ぶこと

2006/05/17

No. 33

建築を設計することの可能性

ここ数年、建設プロセスのなかの建築設計者の位置に揺らぎが生まれている。社会の構造改革の流れが加速したことも揺れ幅を大きくした。建築を設計する仕事は、専門職として技術力を発揮するだけでなく、専門能力を持つ第三者に仕事を委ねる役割を併せ持つために、どうしても社会の変化の影響を受けやすいことがその理由である。また、建築をめぐる大きな社会的な事件が起こると、専門家の資格や制度にかかわる法律に修正が施される。これは必ずしも法の不備を示すものではなく、建築にかかわる状況変化が、いやそれ以前に社会の変化が予想以上に速いのだ。これらは建築設計者にとって危機なのか、そうでないのか、どちらだろう。

少なくとも、これはチャンスと考えたい。そうしたときに建築にかかわる団体がやるべきことは、こうした現実への短期的処方箋を示すことに留まるべきではない。各団体は現在、この状況下で設計者がいかに正しくその責任を果たすかについて、それぞれの主張をしている(註*)。アプローチはやや違うが、精神は共通のものだ。だが、この取り組みだけでは自分の立場を守ることに精一杯、という印象が残る。

より重要なことは、PM・CM・PFI・デザインビルドなど、建設プロセスにかかわる新たなフレームのなかで、どう建築設計者がたくましくふるまい、作品としての完成度と活動領域の拡大を図るかを考えることである。本来、建築作品としての充実と活動領域の拡大はリンクするはずではないか。「建築設計者がリードするかたちで」、新しい潮流下での新たな関係性、そして倫理を構築するべきである。さらにその結果として、発注者の満足がもたらされなければならない。

あくまで印象論だが、医者や弁護士は、建築設計者より倫理や活動領域が明瞭であるように感じられる。彼らの努力と責任感には敬意を表しつつも、建築設計者の位置の揺らぎの大きさには、社会を変える可能性が潜むように思う。

佐野吉彦

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