2015/10/07
No. 493
それぞれの地域が持続的な活力を生み出すことによって、長期的に国の活力を維持発展させる。昨年末に政府に設置された「まち・ひと・しごと創生本部」の使命にはそのようなねらいが記されている。ここでは、地域に対してうまく背中を押すことが肝心である。つまり自発的な創意が必須なのである。さらに長年にわたる継続がなければ、創意は次の世代にバトンを渡せないであろう。サントリー文化財団が毎年顕彰し、37回を迎えた「サントリー地域文化賞」のラインナップを見ていると、このような条件を満たす成功例が選定されていることが分かる。政府の取り組みに先立ち、地域文化を豊かにし、経済を回す例を丹念に掘り出す表彰制度である。
なかんずく、創意とは組み合わせである。今年の5例は<工芸と世代間交流>(北海道上川地域)、<農業とアート表現>(青森県田舎館村)、<世界遺産とコミュニケーター育成>(群馬)、<伝統技芸(注連縄)と経済>(島根県飯南街)、<歴史継承と音楽>(広島県呉市の下蒲刈島)で、同質あるいは異質を重ねあわせている。それによって、異なる専門家をめぐりあわせることができるのだ。文化的あるいは経済的に手ごたえのある収穫を得るに至ったのは、10年を越える粘りのなかで地元における人材発掘があり、育成・成長が伴っていたからこそである。
先日の、表彰式での受賞者プレゼンテーションでは、今日までの足跡が魅力的に紹介されてきた。過去には、時に大喝采を浴びるものが登場する。相撲や雪合戦といったスポーツ、大真面目な演芸が現代の地域社会に溶けこんでゆく創意に、明るいユーモアが感じられるときだ。笑顔は支える人々の活力になり、人を誘い出し・誘い込み、地域の人々の存在感をさらに高めてゆくのである。