建築から学ぶこと

2013/12/18

No. 405

協働したことの成果は?

このところ、各地でプロジェクションマッピングが開催されるようになった。著名な建築あるいは橋梁にCG画像を投射することで、普段とは違う貌を浮かび上がらせるものだ。東京駅丸の内駅舎での開催が想定外人気で混雑を引き起こしたこともある。観衆と画面が相互反応する仕掛けも見られるようになった。確かに夜の街を楽しめるという点では効果的な仕掛けだが、映せばいいというものではない。構築物や場所のコンテクストと画像との関連づけは必須であり、投射される対象に向けて敬意が払われ、関心を呼び起こすものであってほしい。

話題は建築から離れるが、画像を効果的に使った見事なケースをひとつ紹介したい。2013年11月から12月にLA(ロサンジェルス)オペラで催されたモーツァルトの「魔笛」公演である(引き続きミネアポリスへ移動)。もともとベルリンコーミッシェオーパー(オペラ)が英国の劇団「1927」と協働制作したもので、ステージの壁(ホリゾント)に投射される映像と演技を組みあわせたものだ。1920年代のサイレントムービーと、魔笛らしい予期せぬ展開とが上手に絡み、LAでは好評のようだ。もともと魔笛は創意工夫を刺激するオペラで、最近ではライオンキングを手掛けたジュリー・テイモアによるミュージカル風趣向も良く知られている。以前はベルイマンによる映画版・魔笛が心理劇としての側面を強調していた。このタイプの演出は時折現れるが、全体が暗い雰囲気に包まれることがあり、観衆を置いてきぼりにすることがある。

これらの例のように、建築、音楽、映像、舞台技術など、異なる分野の能力がうまく反応しあうと、面白いことが起きると見られている。だが正確に言えば起きる可能性があるのであって、成功は保証されていない。が、実は協働の妙味はそこにある。高いレベルの成果を導くには、まずい協働を忌憚なく批判すればいい。それが批評的土壌を育てるだろう。

佐野吉彦

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