建築から学ぶこと

2015/09/16

No. 490

伝えるべき・掘り下げるべきメッセージ

現時点で世界最高高さのビルは、ドバイにあるブルジユ・カリファ(828m)。このイメージは、フランク・ロイド・ライトによる「マイルハイタワー」(1956)と名付けた超高層ビルのスケッチを受け継ぐものであり、さらにはミース・ファン・デル・ローエの「フリードリヒ・シュトラーセの超高層ビル案」(1921)の平面計画の延長線上にもある。そのようなことが近著「ドバイ<超>超高層都市―21世紀の建築論」(鹿島出版会・刊、松葉一清+野呂一幸)に記されていた。この<ありえないほどの高さ>によって時代を予見するメッセージは、使われるべき場面で新たな花を開いたということになる。先行者の眼差しを感じ取ったエイドリアン・スミス(SOM)の慧眼も称えてよいが、人が死し、時を経てもなお名を残し続ける事実にも目を見張る。

ここ数年、菊竹清訓や丹下健三らの教え子によって、出版や展覧会などの創意ある企画によって、師の教えを掘り下げる作業が行なわれてきた。どの職業でも同じことだが、優れた建築家は教育機関でのポジションのあるなしに関わらず、次の世代にメッセージを伝えることに全人格的に取り組むものだと感じる。そして、日常の言葉のなかから、後継者それぞれは、なすべき使命、どのように師の提起するものを受け止めるかを探りあてている。結果的に名が残り続けるのは、生者が、先行く者と自らとの間につながりを見出し、ダイナミズムを意識したからなのだろう。ブルジュ・カリファが受け継いだのもあくまで深い思考の領域で、それを手がかりに都市や世界のありかたを考えようとしたわけである。

その一方で、若い年齢で亡くなった者の継承についても心に留め置きたいと思う。年かさの者に比べての蓄積は少なくても、持っているメッセージは純粋で強いのである。彼らが残したものを掘り下げ続けることは重要である。

佐野吉彦

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