2015/03/04
No. 464
改正建築士法が6月25日に施行される。書面による設計契約の義務付け(延床300m²以上)や、設計業務からの無資格者の排除の趣旨は意義あるものだが、発注者にも、ともに建築をつくるプロセスにおいて、法律遵守の努力を求めるところが重要である(建築士向けパンフ1と建築主向けパンフ2参照)。
同じ国土交通省管轄の法律では、建設業に軸足のある品確法・建設業法・入札契約法の改正も4月1日に施行される。ここでも発注者の責任が問われるようになった。一方で、今回の改正に、多様な発注方式を可能にする流れが盛り込まれているところには着目したい。ここにある、建築設計の慣行から一歩踏み込んだ文言を見るとき、建築設計サイドが適切な知見をつねに提供しておかないと、建築設計のマーケット基盤も、建築士法の趣旨が揺さぶられかねないからだ。
実はこれら一連の改正は、日本の建築生産プロセスが過渡的な状況にあることを示しているのかもしれない。すでに前回の建築士法改正(2008)において、建築士資格は教育機関での教育、継続講習などに密接なつながりを持つようになった。それはグローバルな視点からみて整理がなされた措置でもあったが、今後も、日本の建築生産がグローバルマーケットにさらにリンクするようになれば、さらに動きが出てくるであろう。すでにオーバーシーズ・ビジネスにおける建築設計者の任務や位置づけは、国内法が向きあっている現状以上に多様になっている。そこでの専門家の責任の明確化、人材育成、ビジネスの実効性のためにも、諸法令や専門家資格を効果的に整え続けることは必然である。
おそらく建築設計も施工も、チャレンジを要するケースにおいて能力を発揮してこそ、価値が認められることは同じだ。国内外を問わず、いやもしかして国の別を問わず、建築にかかわる諸団体や行政が柔軟に連携するべきだろう。法改正の年の春こそ、専門家がグローバルな課題に取り組む気運をつくりだしたいものだ。
付記:今年は民法改正の動きにも注目。ここでも専門家の責任が問いなおされる。