建築から学ぶこと

2019/05/15

No. 671

それなら、BIM+アジア。

種田元晴さんによるインタビュー記録「建築CAD黎明期の野心と苦心を聞く」(「建築雑誌」5月号)に、「CAD黎明期には、考案したデザインを効率よく“生産”するための製図の道具としてコンピューターを用いることよりも、デザインそのものを“生成”するための思考の道具としてコンピューターが生かせないか、との点に力が注がれていた」というくだりがある。私の当時の空気は記憶しているし、そこにあった熱気がその後のBIMの歩みを促したということができる。時をおいて、BIMは現実に広がりを獲得しつあるが、建築生産の各段階での効率性達成という狭い効果に収まってはいけない。CAD黎明期の熱い思いを振り返りながら、現代に即した炎を燃やしてゆきたいものだ。
ところで、建築雑誌の同じ号には、アジア各国の建築設計組織の変遷を比較した興味深い特集「アジアの<組織派>と<アトリエ派>」が組まれている。各国の戦後に起こった社会背景が設計組織と設計プロセス運営を生み出した流れが扱われる。もちろん日本も含めて、それぞれの独自性が専門家を育ててきた。一方で、これから先は国境を越えた活動が加速するだろうから、日埜直彦さんが特集の中で語るように「日本の特殊性を含めて、差異を具体化する文脈を押さえて考えることが必要」である。そのうえで実務的にお互いを繋ぎ、日常的に協働が起こる未来を描くと面白いのではないか。
昨年あたりから、BIMについては国土交通省がさらなる展開に向けての本腰を入れてきた。ぜひ標準化や運用ルールづくりといった事項だけでなく、時代を変えるパイロットプロジェクトが立ち上がるといいと思う。私が考えるのは、BIMが得手とする情報基盤づくり、生産プロセスの再編、デザインの転換などを、アジア圏の展開・成熟に活かす切り口にしてはどうかというものである。それによって異文化がつながり、グローバル人材が育ち、それぞれの国の建築が一皮むけると思う。

佐野吉彦

「日本を今一度せんたくいたし申候」と言った坂本龍馬(高知・桂浜) 

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