建築から学ぶこと

2011/04/13

No. 274

非日常と日常、そしてそこにある技術

震災からほぼ1ヶ月の時期に至って、さまざまな分野で災害を概括する機会が増えてきた。そのひとつが日本建築学会の「緊急調査報告会」(4月6日、建築会館)である。報告は東北だけでなく関東各県や長野・静岡両県にまたがる踏査に基いたもので、被害の地域的な傾向が明らかにされていた。東北の被害については、報道を通じて承知ずみの被害状況についてはあえて重複を少なくし、学会らしく「原因」のメカニズムと建築に及ぼす影響に重きを置いていた。ここでは、1978年と2005年の地震での事実から得た教訓や改善がどのように効果を生んだかということ、津波を想定して海岸線からの距離に応じたマイクロゾーニングと、それに対応する構造形式の切り換えなどの取り組みが紹介された。

東北には豪雪も冷夏もあるなど、自然の脅威も恵みも十分享けてきた土地である。この地の建築や土木の技術者は、災害を想定しながら技術を蓄えてきたということになる。そのうえで避けられた事態と避けられなかった事態を分析することは、他地域、海外各地における災害対策に大きな知見をもたらすものであろう。日常のなかに突然現れる非日常については、誰もが入念な対処を考えておかねばならないからである(なお、日本建築学会東北支部が英語のポータルサイトを設けているのは注目に値する)。

この日の報告会の最後に、佐藤滋・建築学会会長からいくつかの提言が示された。興味深いのは「仮設住宅のみではなく安心して生活できる仮設市街地の建設が重要」という提案である。阪神・淡路大震災では、当初から仮設住宅が抱える課題は明らかでありながら改善は十分でなかった。今回のように都市部でなく、かつ地域の復興に時間を要することを考えれば、ある期間を快適に過ごす市街地計画は真面目に検討されてよい。非日常における日常性の確保ほど重要なことはないからである。

佐野吉彦

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