2020/06/17
No. 725
6月に入って、WEBINARにもオンラインコンサートにも好事例が増え、知的生産や表現形式に新たな趣向がどんどん生まれている。チャットで視聴者の反応が発信者に伝わることにより、発信内容を豊かにする進行は、まさしくパーソナルメディアがブロードキャストを上回る。この動きを力に出来る人材はどんどん広がっているのではないか。というより、オンラインの巧みな使い手だけが生き残ってゆくのかもしれないとさえ思う。これは社会への刺激としても前向きに捉えたい。
だが心配なのは、第722回でも指摘したように、まだまだ日本社会全体がITの使い方に熟達しているとは言えないことである。ネットを活用して地方行政、学術的な議論やビジネスを進めるには、情報の容量もスピードも足りないし(ハード面)、会議での論点集約技術も磨く必要がある(ソフト面)。それらはこの2-3か月の間に、私の関りがあった団体や組織、地域社会で感じたことである。とくに閉鎖的な性格のあるコミュニティでは、オンラインの可能性に対して億劫になりがちであった。それでも、<リモート>によって物理的な距離が縮まり、移動時間と経費(と体力)が節約できたと捉えているのなら進歩である。COVID-19局面に対処する過程で、これからは<リモート>と<リアル>を賢く組み合わせることが重要と理解できたなら、その組織は意識の進化があったと考えられる。
しばしばコミュニティは、今回のような予想のつかない災難を前にしたとき、あるいは複合的な災害に見舞われたとき、もしくは存在を揺るがす困難にさらされたとき、コミュニティの中心価値をどう維持し転換するか悩む。結果としては、それは前向きの試練である。となると、<リモート>+<リアル>時代の到来は社会のあちこちにいいきっかけを与えるのではないか。