2021/06/09
No. 773
少し遡った2020年7月に、国際協力機構(JICA)と公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)が「スポーツを通じた国際貢献強化に向けた連携協定」を締結した。趣旨には<スポーツが社会や人々のつながりに与える根源的な価値及び重要性を改めて認識し、スポーツの力や価値を国際協力において最大限に活用することを目的としています>(JICAホームページ)とある。すでにJICAはアフリカなどで海外協力隊による「スポーツと開発事業」の実績があり、その担い手となる力がある。また、日本が東京にオリンピックを誘致する際に、こうしたアクション実施を謳っていたから、これは妥当な連携だと考えられる。新型コロナウイルスの蔓延は事業推進の支障にはなっているかもしれないが、ぜひ長期的に取り組みを続けてほしいものである。
それから1年経った初夏、日本はようやく新型コロナウイルスワクチン投与が進み出してきた。それと並行して、6月初めに日本政府と国際組織「Gaviワクチンアライアンス」の共催で、このワクチンの普及を議論するCOVAXワクチンサミット(AMC増資首脳会合)が行われている。そこでは、今年中に途上国人口の30%に無償で提供する目標に向け、不足する17億ドル(1870億円)資金確保にメドをつけたという。日本は、菅首相が8億ドルの拠出を表明し、さらに、日本の公的接種の対象ではない、英国アストラゼネカのワクチンを念頭に、日本国内生産分を他の国・地域に提供する方針も述べている(以上、日本経済新聞記事に基づく)。
これらの働きかけは、中国やロシアが自国製ワクチンを途上国などに配ることで影響力を強める動きへの対抗の側面があり、やや生臭さもある。私は、政治力学の観点から意見を述べないが、世界が平和的に共存する枠組みをつくる趣旨である限り、日本の動きは評価できる。日本らしいあり方として正当である。それを常に念頭に置いて価値判断する政治・行政であり、専門家でありメディアであってほしいものである。