2014/12/10
No. 453
建築技術教育普及センターが、「海外の建築資格制度等に関する調査報告会」を開催した(12月2日)。自らの手によるものや、助成による研究調査を総覧的に紹介していて、中身の濃いものだった。日本の建築界の中で、建築教育システムや専門家資格を世界地図の中で位置づける作業は、今年2014年に、日本の教育システムがキャンベラ協定(環太平洋他の国の教育認定機関による協定)に加わったことにより、一歩進展を見せた。今回、春原浩樹氏から報告があった<各国の資格制度の比較と類型化>から、どの国も専門家の資格の実質を継続的に維持する必要を感じていることをあらためて認識した。日本の建築士法が幾度かの改正で手直しをしてきた経過は、世界の動きとそう大きなズレはないようではある。
一方で田中友章氏が紹介した<アーキテクト資格の動向>の中では、アメリカの建築家資格取得プロセスが、教育と実務研修の同時並行や、他国での専門教育の認証といった点で、柔軟な試みをしている話が興味深かった。これは、アメリカの建築家資格というブランドを強化するものではないか。ここで、私はKENCHIKUSHIというブランドの可能性についても考えをめぐらせてみた。あるいはCASBEEの汎用性についても..。
果たして日本の建築界は、連携して国際的な競争力強化に取り組むことができるだろうか。ここ数年、建築の専門家が国境を越えてゆく動きが加速してきた。大企業も、小さな組織も。大きな資格の問題を正しく扱うことでその背中を押すことになるだろうが、作品としての成果を実らせるなら戦えるデザイン力は不可欠だし、ビジネスとして持続的成功を目指すなら日本での守備範囲を拡げて取り組む意欲が必要だ。建築界や建築団体はこれまでのところ、システムづくりはこなしてきたが、現実のマーケットをふまえた戦略づくりにもっと力を入れてもいいと思う。