建築から学ぶこと

2018/02/14

No. 610

雪の教訓

2018年の1月から2月は全国的に寒波が襲った。鹿児島でも何度かの降雪があり、私も横浜市内での積雪を経験した。太平洋側の都市は相変わらず自然災害に対して脆弱である。一方で雪をよく知るはずの新潟や福井でも、道路や鉄道の扱いかたがうまくゆかないケースがあった。2月の福井では、結果的には幹線道路への車の流入を早めに止めておけば良かったのだろうが、こうした予測を越える事態での経験は将来への教訓となる。福井は「38豪雪」(1963)と「56豪雪」(1981)と呼ばれる困難を語り継いできたが、自然災害は同じようには起こらない。時代も違う。当時から比べると、流通ネットワークの拡大によって、雪害の影響はその地域に留まらなくなる。日本全体が雪害に対するリスクマネジメントを意識する必要があるだろう。雪害は日本の未来にかかわる問題である。
建築基準法は、雪に向かう構えをつねに意識してきた。従来から積雪荷重は、施行令と細則によって、地域ごとに細かく規定すべきと示されている。直近では、国土交通省は2017年12月に、降雪後の雨が荷重を増加させる事象に鑑み、緩勾配屋根の荷重条件を強化することを表明した。現実には、雨でなくても、日が経つと屋根の雪は重くなるようである。早めの雪下ろしによって家屋を守るのは多雪地帯の常識らしい。
その雪下ろしについて、施行令86条には、「雪下ろしを行う慣習のある地方においては、積雪荷重を減じる」ことが謳われている。実際には、今回の福井では、「38」と「56」の頃から世代構成が変化し、高齢世代が雪の処理に汗をかいていたという。雪下ろしの慣習というのも、いつまで、どのように可能なのだろうか。基準法でできる解決は限られている。これも日本のリスクマネジメントのひとつである。

佐野吉彦

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