2018/04/25
No. 620
鉄道ターミナルや空港ビルは都市の玄関である。信頼感を感じさせる構えを持ちつつ、明瞭に交通や人の動きを仕分けることが必要条件である。だがこのところの移動が活発な時代になると、それだけでは答にはならない。このような「結節空間」は、異なる志向を持つ交通機関相互をなめらかに接続する場にもなり、またそれ自体が一大消費地であることが求められるようになった。たとえば、ベルリン中央駅(独)では、乗り入れる複数の鉄道路線をタテに深い吹抜空間の中で巧みに捌いてみせ、新千歳空港ターミナルビルの巨大な土産物ゾーンは商業的な成功を目指してきた。それでも、建築的にはすべての側面で安定的な解に持ち込むのはなかなか難しい。絶えざる変化とともにある駅・空港・港は、これからも模索と挑戦が続く。
この春から、関西エアポート(株)のもとに関空・伊丹・神戸の3空港が含まれることになった。それぞれの空港の生い立ちを思えば、よくぞこのような経営統合が実現したものだと感じる。このうち伊丹空港のリニューアルは進行中で、まずはこの春から空港からモノレールへの接続が飛躍的に改善した。一方で空港外の、空港―都市間、空港―空港間のアクセスについては改善の余地がある。いずれも経路のどこかに課題が残るために、距離のわりに時間と手間がかかっているのだ。
都心に近い羽田空港でも、モノレールとはすぐ接続できても、終点・浜松町での乗り換えは相変わらず不便である。そもそも日本国内には空港連絡鉄道はあっても、フランクフルト(独)やスキポール(蘭)のように空港と長距離特急が接続するかたちはなく(しばらく新千歳空港では実現していた。)、乗り換える手間は煩わしい。統合官庁・国土交通省は交通体系の再編にもっと積極的かつ細やかに向きあってほしいものだ。多客期に人があふれる結節空間には、計画的欠陥が存在する可能性がある。