建築から学ぶこと

2025/04/09

No. 962

小池一子さんへの頌歌

小池一子さんの、旭日中綬章受章(芸術文化功労)をお祝いする会が3月に開催された。小池さんの足跡は、コピーライティング・商品開発・キュレーション・アートプロデュ―ス・アートスペース運営、人材育成など多岐にわたる。それぞれの成果は、輝いているだけでなく、いずれも先を見据えた明瞭なまなざしが備わっていた。小池さんは、踏みとどまっていれば変わらぬ社会の現実を見て、自ら動き出したのである。かといって、小池さんだけに光が当たることにはならず、田中一光や三宅一生といった人たちを伴走者として盛り立てる役割を務めたり、佐賀町エキジビットスペースの積重ねが、若い作家に力を与え、地域と社会を動かす先導的な役割を果たしたりした。
私自身は、小池さんが代表を務めるコマンドAでいま一緒に仕事をしている。コマンドAは、アーツ千代田3331運営などのアートと社会をつなぐ活動を担ってきた組織体である。私は本業からは離れてのこうした「つなぐ活動」にいろいろ関わってきたのだが、考えてみれば、そうしたそれぞれの活動をさかのぼると小池さんが投じた一石があると感じる。いずれにしても、小池さんと同じ志で具体的な課題に立ち向かうのは楽しく、そこには大きな学びの機会がある。
もし、建築を含めた戦後のクリエイティブな取組みやそこにあった課題はどのようなものかを知ろうとするなら、小池さんに尋ねればいいだろう。小池さんと同じように、文化と社会の双方の状況を俯瞰できた達人では梅棹忠夫さんや山崎正和さんが思い浮ぶが、いずれも人の心を開かせ、勇気を授けるパーソナリティがあり、そして自らの身体を通して対象を見極める姿勢が似通っている。小池さんは小柄ながら、颯爽として、歩いて確かめることにためらいのない小池さんには、ひときわくもりのない眼、健全な魂が宿っている。今後も活躍を祈りたい。

佐野吉彦

小池さんの、優しくて勁い(つよい)言葉。

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