建築から学ぶこと

2025/05/28

No. 968

建築を公開する試みの数々

東京建築祭」が昨年の第1回に続いて5月に開催された。さまざまな建築、特に近現代建築の扉を開く得難い企画である。多様な自主プログラムが催されたなか、主催者によるトークショー「日本建築祭まつり」に参加してみた。この場で登壇したのは「生きた建築ミュージアム大阪」・「オープンナガヤ」・「ひろしまたてものがたり」・「あいちのたてもの博覧会」・「京都モダン建築祭」・「神戸モダン建築祭」・「はんだ建築まつり」・「なめりかわ建築フェスティバル」・「ひろしま国際建築祭」の代表者で、これに主催者「東京建築祭」を加えて、趣旨が共通する、全国10の建築公開が取組み報告をし、意見交換をした。
いくつかは10年奮闘してきた「生きた建築ミュージアム大阪」の経験を参考にしている。それらは、概ね大都市ならではのアプローチであり、公開する建築の質と量の充実に、来訪者の確保、運営資金の獲得をどう組み合わせるかが主眼となっている。もちろん、普段見られない建築の見学に人が集まるのは、建築への関心の高さを証明するものではある。建築史家が中心にいるのは、その眼差しを受けるには適切であろう。とは言え、価値がいくら高くても、同じ場所に毎年来てもらえるには工夫もいるだろう。そのあたりの努力の積重ねが、取り組みに対する地域社会の長い共感と支持につながるから、まずは、それぞれが10年間頑張ることを当面の使命にして、運営体制づくりや次世代の担い手育成に努めてほしい。
面白かったのは、富山県滑川市で進めている「なめフェス」が、貴重な建築を遠隔地からの観光ターゲットにする可能性を探っていることである。建築に、地域の味や体験型企画も組み合わせれば、地域が培った文化への理解も立体的になる。現代の建築家の作品もあわせて紹介できると面白いのではないか。近隣都市との連携は集客効果がありそうだし、全国的ネットワークにすればさらに経済も活性化しそうである。

佐野吉彦

実は私たちも当事者:東京建築祭での「安井による折紙ワークショップ」

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