2006/07/12
No. 41
組織もコミュニティも、多様な個性を受けとめるものでなくてはならない。異なる能力と異なる趣向を持つ人が共存し、うまく噛みあう仕掛けが作れていれば、新しい知恵・付加価値、さまざまな創意工夫が生みだされてくるものだ。特定の層だけが集まっている場では、驚くべき化学反応は起こらない。少なくとも、退屈である。
最近、AIA(アメリカ建築家協会)は「LIVABLE COMMUNITIESの10の原理」を提唱している。内容は「ヒューマンスケールのデザイン」・「行動パターンの選択肢を増やす」・「複合機能型開発の促進」・「中心街区の活力保存」・「多様な交通手段」・「活力あるパブリックスペース」・「場所のアイデンティティ」・「環境要素を守る」・「ランドスケープの維持」・「優れたデザイン」といったもの。景観と活力が好循環する、まさに理想的なありようだ。これを見ると「LIVABLE COMMUNITIES」とは、「住みがいのあるコミュニティ」と訳すのが適当だと感じる。
この「10の原理」は建築家のための地域計画論の装いではあるが、専門家以外にも向けられたメッセージでもある。優れたコミュニティは、ただ景観を美しく整えるだけでは退屈なものでしかない。人の集まらない公園や広場は意味がないし、どこにでもある「ハコ」が立ち並んでも愛情を持てないだろう。すなわち、望ましい成果は行政や住民、専門家が粘り強く議論を積み重ねてこそ実現するものだ。ここでは、「10」という数よりも多面的にコミュニティを考えることが重要だ、と説いているのだ。
言い換えれば、多様性を許容するプロセスが、多様性を有するコミュニティをつくる。とは言え、利害関係をうまく乗り越えてまとめるのは簡単ではない。そのために、仕掛けづくりにかかわる知恵は必要である。明瞭なかたちも求心力を生みだす起動力となるであろう。