建築から学ぶこと

2020/10/28

No. 743

切り口を変えれば動きが生まれる

新型コロナウイルス感染症の収束はまだ見通せない。それでも夏ごろから政府が消費活性化支援の手を打ってきたことで、人と経済は動きはじめた。この一連の<GO TOキャンペーン事業>による後押しは、急な出動ゆえに、全般的に準備の精度が粗い印象は否めない。そのなかでじわりといい効きかたをしそうなのが<GO TO商店街>ではないか。全国の商店街それぞれが蓄積してきた取り組みを募集し、評価・採択するものである(109日の一次締切で34件採択)。支援金を基金にした新たな切り口の商店街活性化策も含まれている。資金的には時限的だが、2020年の困難を乗り越える腹が据わっていれば、来年度以降の自助努力・消費開拓につながる。いつもは地味な商店街がこれを機に一皮むけると面白い。

もうひとつ、政策的に今年の動きにフィットしているのは、昨年から推進が始まっていた<スタートアップ・エコシステム拠点都市形成政策>である(8都市あるいは都市圏が推進地域)。もともとはコロナ対策ではないが、今年になって企業内外の協働のスタイルが柔軟化する流れが進んでいることが、さまざまなかたちの産学連携への追い風にもなっている。こうした動きのなかで開設されたクリエイティブラボ神戸(神戸市)を見ると、まず、背景にこれまで連携不足であった京阪神3都市の経済・3大学の知恵を組み合わせてゆこうとする流れの変化がある。また<レンタルラボ開設+コミュニティ―スペース運用>を併せ持つコンパクトさは、東京ではなく、地方中核都市の活力向上のプロトタイプとなっていると感じる。

以上挙げた政策は、コロナへの危機感とうまく作用して、国と民間双方にスピードを与えて花を咲かせるポテンシャルがある。それゆえに、できるだけ早い時期に民間のリーダーシップによって成果を得ることも期待したい。民間が主役になり、政府をうまく活用してこそ日本らしい未来がある。

佐野吉彦

クリエイティブラボ神戸(左)と
神戸医療イノベーションセンター(右)

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