建築から学ぶこと

2010/03/17

No. 221

この街ならではの知識と身体

サンフランシスコのゴールデンゲートパークは豊かな緑が魅力だ。ジョギングするにはなかなか楽しい包容力である。著名観光ポイントとは離れているために、利用のされかたはローカルなところがあったけれど、近作のde Young Museum (設計: Herzog & de Meuron)と,それと向き合う位置のCalifornia Academy of Sciences (設計: Renzo Piano)によって、一挙に集客力が高まった。

前者の空間づくりは興味深く、これぞBIMの本領発揮という構えである。後者はその面ではひねりはないけれども、環境装置として面白い。内包された2つのドームが屋上にアタマをもたげていて、それらが緑で覆われて丘状になっている。サンフランシスコの7つの丘がそこにある、と謳ってプレゼンテーションしたらしい。こうしたあたり、極めて楽観的な思想が宿る建築である。写真にあるのは熱帯雨林を再現したドームで、湿度が保たれた内部をぐるぐると登ってゆくと、鬱蒼とした樹叢から、鳥が飛び交い、蝶が舞う高みへと景観が遷移してゆく。下階に降りると、そこは沼の下部。森を立体的に経験したあとドームを出ると、環境危機を訴えるわかりやすい展示が並ぶという、実に良く組み立てられた環境学習空間となっている。

ここにある環境メニューのひとつ、建材のリサイクルについては、建築士定期講習のテキストにも紹介があった。実際に訪ねてみると、環境面で何ら禁欲性はなく、アミューズメント施設と見紛う楽しさが広がっている。知識と身体を結びつけるエデュケーションスタイルは学んでよいだろう。大火や地震からの再生を経験し、かつてのカウンターカルチュアや、殺伐としたエリアを巧みにジェントリフィケーションへと導いてきたサンフランシスコ。あなたがたの道具立てと繰り出す手口はわかりやすい。

佐野吉彦

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