2019/10/02
No. 690
さきごろ国連の演壇で、スウェーデンの環境行動家グレタ・トゥーンベリさんが、気候行動サミットに出席した政治家に向けて強い口調で語りかけた。直接的には環境政策において結果を出していない政治への要望(問いただしに近い)であるが、若い世代からの政治不信を表しているようでもある。それは、各国首脳は差し迫った環境危機を最優先のテーマとして捉えていないのではないかとするメッセージ。日本からは就任したばかりの環境大臣が座っていたが、今後は、環境問題は最も能力の高い閣僚によって推進されるべきことが明らかになった場面でもあった(現任者がそうであることを期待する)。もちろん映像は世界中に流れているわけで、環境をとかくスマートに語ってきただけの市民や経済人にも十分衝撃を与えたと思う。
たしかに地球はすでに課題を背負っている以上、これからの社会変化をどのように支えるのかについて、かなり周到に準備を重ねなければならない。2100年には地球の人口は110億を越え、アジアは47億超、アフリカは44億超の人口を抱えると言われる(国連推計:参考文献2)。ヨーロッパにおける環境政策は、すでに国の安全保障そのものであるし、アフリカにおける農業技術は、増加する人口を支えるために大きな革新が求められる(効率的な農業と、諸分野での人材の活用)。良い意味で「課題先進国」である日本ならば、多くの知見が用意できるはずである。今日の世界平和とは、技術革新とその適切な手段共有によって具体的な達成目標を組み立てるべきテーマになった。もはや軍事や通商での二国間対立や駆け引きを煽っている場合ではないだろう。
それにしても、社会課題における若い世代からの提言は重要である(香港でも見ることができる)。それを各世代が冷静に受け止め、どのような議論と行動を起こすかは、民主主義が生き残れるかどうかの鍵でもある。
参考文献
1 「アフリカを見る アフリカから見る」白戸圭一(ちくま新書2019)
2 「2100年の世界地図」峯 陽一(岩波新書2019)
3 「日本を救う未来の農業 」竹下正哲(ちくま新書2019)