建築から学ぶこと

2015/04/15

No. 470

アラブに向けたメッセージ

駐日アラブ外交団が主催した「アラブウィーク2015」が4月の初めに開催され、このプログラムの中に「アートで結ぶ友情:日本人芸術家によるアラブ世界の印象と表現」と名付けた展覧会の企画が組み込まれた。会場では様々な分野のアートやプロダクトで賑やかな空気が生まれている。展覧会としてスマートにまとめようとしたものではないかもしれないが、日本人の表現者がアラブ世界の風土や言語と向きあい、そこから自らの表現を紡ぎだした軌跡。個々の作品には力を感じる。何よりも、アートを、国と国をつなぐ「肉声が聞こえる」メッセージだと位置づけているのは慧眼だ。

展示+レセプション会場はオマーン・スルタン国大使館のメインロビーである。ここは安井建築設計事務所の設計なので、言うなれば会場そのものが日本人建築設計者によるアラブの表現ということになる。今回は、お誘いがあって、展覧会に透視図を展示するというかたちでも参加した。レセプションでは、アラブ諸国だけでなく、アフリカなど広がりのある外交官たちが姿を見せていたが、この絵の前で外交官たちと会話が弾み、いい外交ができた。専門家によるアクションが胸襟を開かせているわけだ。ちなみに、あなたはどのようにアラブを学んだのか?という問いがあったので、設計者は、そのプロジェクトごとに対象を深く学ぶものです、と答えた。建築家の価値とは、まず対象の理解力で力を評価されるべきと考えたからだが、ここまで会話が弾むとアラブへの親近感もあらためて増す結果をもたらす。

専門家がよりよく生きるには、タテ軸(専門家としての能力と思想)とヨコ軸(人と人とのつながり)の組み合わせが有効だというけれど、結果的には、つながりあうことが専門能力を高める上でも好影響を及ぼすものである。

佐野吉彦

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