2013/04/03
No. 369
前号でも触れたように、年度末の3月は設計作業も施工も納品の季節である。発注者に「建築」を引き渡す節目。彼らはその建築を活用した4月からの円滑な事業開始を期待している。設計組織としては、この月、年度の経営収支の結果も次年度の経営計画策定、組織人事発令も取り扱う重要項目となる。ただ、繁忙さの理由は、この月を決算月とし、1年前の経営の結果をフォローする手筈を整えたことに起因する(あくまで当社の場合であるが)。予め取り決めた「組織の型」あるいは「運営システム」は経営を制約するものであるが、それだけでなく組織基盤の役割を果たすのは民間企業/組織なればこそ。設計事務所の個性も、こうした組織の身体を構成している骨と筋肉のつくりに由来するのだ。
長く続く組織の場合、「型」や「システム」がどのような経緯でつくりあげられ、どこにこだわりを持ち、どのような手間をかけて伝授され・受容されているかは興味深い。さらに加えて、どの節目やきっかけでそれらが問い直されているかを見ることも重要である。リーダーの交代かもしれないし、ひとつの仕事の獲得かもしれない。そこにあらたな型とシステムの萌芽が生まれているはずだ。たとえばある仕事をこなす結果、受託組織は発注組織の鏡像になることがある。現実に向きあってきた軌跡のなかに、今後の組織の方向性を考える鍵があるだろう。
そのような眼で眺めてみると、さまざまな建築の専門家団体でスタートする新公益法人制度下(一般社団法人か公益社団法人の選択)の4月からの新年度は、実態の改革より形式面の変換の印象が強い。何を当面の活動の重点にするかは明らかになったこの時代局面で、将来的に団体をこのかたちで存続させることについての根本的な問いが始まってよいのではないだろうか。