2023/10/25
No. 890
あるプロ野球関係者に聞いてみると、彼は日本のプロ野球の現状に基本的に満足していた。戦力はドラフトによって偏りがなくなっており、球団の努力次第でどのチームにも優勝の可能性がある。また、戦力が整備できなくても、野球は一打で戦況の急転回が生まれる、面白いスポーツだというのである。確かにそれならファンは応援しがいがあるというものだ。日本における野球は、そのようにしてシステムに少しずつ手を加えながら、何とか首位の座を守り続けている。
もちろん、ほかのチームスポーツが優る点はある。サッカーはJリーグ発足時から育成段階を含めた柔軟なシステムを構築し、早くから世界とつなげたビジョンを考えてきたところは選手のモチベーションを高めており、野球をはじめとして各スポーツの取組みを刺激したのではないか。バスケットボールやバレーボールについては、観客と選手の動きの近さが地域密着の熱量を高めているようだ。点数がどんどん積み重なってゆくところもドライブ感がある。駅伝は厳密にはチームプレーという定義ではないが、このような一人の不調が結果に直結するスポーツは、日本人のメンタリティに合っていて、視聴率が稼げていると言えるかもしれない。
プレイヤーとファンの拡大、球団経営の充実は以上のとおり進んできたが、こうしたスポーツが地域経済を刺激し、地域の将来をダイナミックに動かすことも期待したい。拡大資金を投じた施設の常時活用や担い手育成、産業創造という点では、理想的な成功事例は少ないのではないか。だからこそ、日本ハムファイターズの本拠地・エスコンフィールド、これから誕生する広島や長崎のスタジアムがどのような新たな動きを地域に生み出すかは関心を持っておきたい。そこからスポーツの質が高まる循環も必ず起こるだろう。