建築から学ぶこと

2021/06/16

No. 774

G7の成果をめぐって

ちょうど10年前の初夏、私はアメリカ建築家協会大会(AIA 於・ニューオーリンズ)での各国代表者会議(International Presidents Forum)に、日本建築家協会の芦原会長(当時)の代行として出席した。その年は東日本大震災の年であり、9月には東京で国際建築家連合(UIA)の大会が予定されていて、日本の実情についての熱心な質問に応答し、秋の参加を呼び掛けた。日本に限られた災害下だったので、努力は、打てば響いた。一方で、立場が遥かに重い菅総理も、グローバルな懸案事項の盛りだくさんなG7サミット(主要7か国首脳会議)の中に、オリンピック開催の文言を残すのは骨が折れたであろう。

6月11日-13日に開催されたこのサミット(於・英国南西部のコンウォール)は、2年ぶりに対面で開催された。懸案事項もすりあわせが功を奏し、トランプ大統領に振り回された何年かを過ぎたあとの、世界の動きを冷静に総括できたサミットだったかと感じる。首脳コミュニケに盛り込まれた項目には、まず、すべての国を対象とするコロナ対策積極化のための協調行動があり、途上国のインフラ構築支援のために当事国との連携といった項目がある。長年決着しなかった国際課税についても、7月のG20財務相・中央銀行総裁会議での合意を目指す流れができた。自由で公正な貿易という視点も強調されている。さらに、言葉を選びながら台湾海峡の安定性確保の主張もあった。

気候変動・環境分野については踏み込んだ目標が掲げられ、2030年は脱炭素化の目標年とともに、生物多様性の損失を反転させる目標年にもなった(「G7 2030年自然協約」の採択)。中国に対しては、環境課題達成への協調を呼びかけている。コミュニケには、社会正義の実現に向けてG7が共有する価値を確認するくだりがあって、先進国が持つべき責任感がうまく表現されていた。 このサミットはいい起点となるだろう。

佐野吉彦

サミット会場であるカービス・ベイの景色 <Photo:Andy F

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