建築から学ぶこと

2009/12/02

No. 207

ダウンサイジングの時代の建築技術

鉄道の高架下とはどういう場所なのだろう。時に、商店や倉庫で埋められた「実」であったり、時に、公園や駐車場のような「空」であったりする。それらは線路が分断して生じた現象なのだが、もっと、長さを持つ特徴的な領域が誕生したことに着目できないものか。現況を見ると、結局そこだけが異質のままになっている。おそらく、両側の街区にとってエッジであった場所を活かすための、建築や都市計画における標準解が定まっていないのだと思う。

このような、地域形成や景観形成のために、専門家の追究が不足している課題はいくらでも指摘できそうである。少しポイントは異なるが、普及が進む太陽光パネルなど環境系製品には、色彩とディテールの未達成感を感じる。現状の製品は、地域らしさ、他の素材とのフィット感においても、大いに改良点がある。こうしたデザインにかかわる課題などは、民間から率先して解決を図ってゆくのが望ましい。私はそう考える。

というのは、政権が変わって、建築や土木にかかわる新施策に予算縮減の視点は生まれても、これからの日本にふさわしい「かたち」や「景観」のありかたについては示されていないからだ。たとえば、見直しが促されている「効果の薄い公共施設」についても、すでに供用・建設途上のものについては、<無駄→閉鎖>以外に<無駄→用途転換>という選択肢が考えられて良い。実は出来てしまったものをどう上手に活かすかは重要な課題である。これも新しい建築的テーマとして民間の専門家が受けて立ったほうがよいのではないか。

国土交通相は、これからの建設業は海外進出を、と表明している。それはもちろん必要な局面かもしれないが、大事なことはそれぞれが何を看板に掲げるかである。国内にある建築技術の課題を放擲したままで、日本のどのようなモデルケースを売り出してゆくのだろうか。開発技術もいいけれど、成熟した都市で編みだした技術上の知恵こそが、広範囲に適用できるはず。政府の施策は施策として、民間は新鮮な眼差しで、都市の足元・保有技術の足元を積極的に見直してみるべきである。それが「技術のパッケージ」になるだろう。

佐野吉彦

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